赤ちゃん子連れに優しい企業
大人のためのファミリーリゾート「リゾナーレ」誕生秘話
星野リゾート(前編)
北海道から沖縄の八重山諸島まで、全国5カ所に展開する、星野リゾート「リゾナーレ」。大人のためのファミリーリゾートをコンセプトに、ファミリーに人気を誇る同ブランドは、2001年12月に運営を引き継いだ「星野リゾート リゾナーレ 八ヶ岳」が原点。
今回は、「リゾナーレ」の立ち上げを担い、現在 星野リゾート オペレーション責任者である桜井 潤氏に、今までの歩みについて伺いました。
八ヶ岳は温泉もなく観光スポットもない!?前途多難なスタート
「実は最初からファミリーをターゲットにしようと決めていたわけではないのです」と桜井氏。今ではファミリーリゾートの代名詞となっているだけに、そう聞いてちょっとびっくりしました。
運営を開始するにあたり市場調査を行うと、「リゾナーレ 八ヶ岳」には、旅の主目的となる「温泉」がなく、周辺に有名な観光スポットもない。「旅行先としては魅力がないという結果がでて頭を悩ませた(桜井氏)」といいます。
ファミリーは「家族サービス・思い出作り」を重視。ここでNO1を目指す
ただ、ファミリー層は、「温泉」よりも「家族サービス・思い出作り」を重視するなど、旅へのニーズが異なる傾向にあったそう。
首都圏から車で2時間以内という立地も、家族旅行に最適ということがわかり「『ファミリーリゾートとしてNO1を目指そう』と舵を切ったのが、現在のリゾナーレの始まりです(桜井氏)」。
実は大人も楽しみたい!コンセプトは「大人のためのファミリーリゾート」
ファミリーをターゲットとしたものの、どういった価値を提供するか……リゾナーレのコンセプトを決める際、代表の星野佳路氏は、2つの投げかけをしたといいます。
・「家族旅行で、親は本当に楽しめているのかな?」
・「旅行中に大人と子どもがずっと一緒に過ごす必要性はあるのだろうか?」
これを聞いた社員からは「実は疲れるだけで、自分は楽しめていない」「親だって、たまにはのんびり休みたい」など、家族旅行に対する不満や本音が次々とでてきたそう。当時は家族向けの宿といえば、子ども中心のサービスに、親が合わせるのが通常でした。
「実は不満を感じている親は多く、本当の意味で家族旅行のニーズに応えていないと感じました(桜井氏)」。
画して「大人のためのファミリーリゾート」という、リゾナーレのコンセプトが誕生したのです。
成功の鍵は「子どもが楽しんでいる間に、親はちょっとリラックス」
大人も子どもも楽しむという難しい課題を前に、まず始めたのが会議室での託児サービス。
「でも、皆さん利用されないのです。ゆっくりしたいはずなのになぜだろうと理由を探ると、どうも親だけ楽しむことに罪悪感があることが、わかってきました(桜井氏)」
子どもが親以上に楽しめる環境がないと、親は自由になれない。そこから現在ではリゾナーレの顔である、子ども向けアクティビティ「GAO」のプログラムを充実していったといいます。
「子どもが楽しんでいる間に、親はちょっとリラックス」という逆転の発想は、それまで不満を抱えていたファミリーの支持を得て、新しい家族旅行のスタイルを形成していきます。「何もない」から始まった八ヶ岳での取り組みは、リゾナーレ八ヶ岳そのものが、旅の目的となるまでに成長。特にハロウィンやクリスマスなどのイベント開催時には、多くの人でにぎわい、笑顔があふれます。
全国展開によって新しい価値を提供。「リゾナーレ」ファンが増加
<写真:星野リゾート オペレーション責任者 桜井 潤氏>
家族旅行ではいろいろな場所へ訪れたいもの。1つの施設だと、お客様とのニーズに応えるのが難しくなってきたといいます。
「全国展開したことで、『次は〇〇のリゾナーレへ行こう』というように、お客様の要望にも応えられるようになりました。一層『リゾナーレ』のファンが増えたと感じます(桜井氏)」
全国のリゾナーレは、食事場所(※子どもと楽しめる・大人が楽しめるという2つを用意)、プール、子ども向けアクティビティ(GAO)、快適な客室、大人が楽しめるサービスを用意するという共通のルールがあり、各施設は、地域の自然や文化も取り入れながら、独自の魅力的なリゾートに進化しているといいます。
後編では、どんな進化を遂げているか?ファミリーに支持される魅力的なサービスが、どんなふうに生みだされるかについてご紹介します。
<取材協力>
星野リゾート
<関連リンク>
星野リゾート http://hoshinoresort.com
星野リゾート リゾナーレ http://hoshinoresort.com/resortsandhotels/risonare/
キッズアクティビティGAO(リゾナーレ 八ヶ岳) http://risonare.com/activity/index.php
著者
- 旅行ジャーナリスト 村田和子
- 1969年生まれ、1児の母。新聞・雑誌・テレビ等で、消費者目線で役立つ情報を提供し、旅行サイトや宿のアドバイザーとしても活躍。2011年、子連れで47都道府県を制覇した経験から、家族旅行を応援するサイト「家族deたびいく」の運営開始。2013年、子どもの成長と家族の絆を深める「村田和子式 親子の旅育メソッド」を発表。家族旅行のスペシャリスト。